コラム

column

        1. 講師としての使命

講師としての使命

研修講師として十数年間、研修についての試行錯誤を繰り返す中で、その都度さまざまな場での出会いから思わぬ気付きを得て、現在に至っています。

その中でも、私の研修スタイルの確固たる核となる部分に気付かされた出会いは今から8年ほど前です。毎回深く学びをいただく授業参観でのこと、生徒たちに絶大な人気を誇るベテラン教師の授業は、当時の私にとってかなり衝撃でした。

それほどまでに人気のある先生が生徒たちをどのような話術で惹きつけているのか興味津々でしたが、意外にも先生の口から面白い話はほとんど飛び出すことなく、先生の話の7割は生徒への問いかけだったのです。

ここ数年アクティブラーニングはすっかり定着してきていますが、まさにその手法に似た授業展開でした。

ただ、質問に対する生徒の返答には、「お~そうなのか~!なるほど!」「みんな今のはどう思う?おもしろいよな~!」などと、心から興味深そうに眼を大きく見開いて反応している様子に、私たち保護者も生徒たち同様みるみる先生の世界に引き込まれていきました。

さらに驚いたのは、解答を全ては伝えず、疑問点を残したまま授業が終了したにもかかわらず、生徒たちの脳はその後も回り続けているように見受けられました。生徒たちの目の輝きは、今でも鮮明に脳裏に焼きついています。

教育現場と研修においてはもちろん違いがありますが、講師としての姿勢を考え直す大きなきっかけとなりました。受講される方々がどうすれば主体的に思考し始めるか、その糸口をどうすれば提示できるかを模索することこそが大切なのだと再認識した瞬間でした。

また、講師の存在自体が生き生きと聞き手の目に映り心に響き、受講後に何らかの余韻を感じていただけることも不可欠な要素であると実感しました。

現在の私の研修の目指すところは、まさにこのことが原点になっています。「前向きな気持ちになった」「明日への活力が湧いた」「行動を起こしてみよう」などという気持ちを持っていただくことこそ、研修の意義であり、講師としての使命だと感じております。